上半身で崩し、下半身で刈るべし

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 いいながら私の首を絞める力は強まるばかりなんだから「まぁいいけど」っていう言葉は信用できないんだごめんなさい放してください話します話しますからあ。  でも、説明したところでエミリにはわかってもらえない……なんて思うのは私の失礼になるのだろうか。柔道部主将、男子に勝るとも劣らないがっしりとした体格、ついたあだ名はゴリラ男。そう呼ばれてもなお、からかう男子どもをちぎっては投げひるむことのないエミリには。 「失礼極まりないよ。私だって傷ついているんだぞ?……まぁでも、慣れてしまったよもう。変えられないもんは変えられないのさ」  ……変えられない。なるほど、変えられないものは確かにある。  たとえば私とジュンイチとの間にある11か月というどうしようもなく開いた時間とか。  家が隣同士、生まれた年度だって同じなんだからそれに倣ってせめて横並びだったらよかったのに、私が気付いたときにはジュンイチはいつも私の一歩前にいて、私は目線より少し上を行く後ろ頭に手を引かれていたのだ。「ジュンイチくんはアヤノちゃんをいつもまもってあげててえらいわねぇ」なんて言われていて。私は守ってほしいなんて頼んでいないのに。     
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