2/10
前へ
/10ページ
次へ
「好きなのどうぞ。まぁ、ファミレスだしたかが知れてるけどね」 私は差し出されたメニューを思わず両手で受け取った。 私の手にメニューが渡ったのを確認すると、高槻さんは面白そうに口元を緩めた。 私は正面からの面白がってる視線を感じつつ、メニューの1ページ目を開けた。 時刻は20時過ぎ。 その時間帯のせいか、店内の席すべてが埋まっている。 私はメニューを見る振りをしながら、私は正面を盗み見た。 高槻さんは立ててあったもう一つのメニューに手を伸ばし、片手で頬杖をついたままもう片方の手でページを捲る。少し俯いているため、切れ長の瞳が前髪で少し隠されている。初めて見た顔でもないのに、初めて見たような気がするのは多分初めてきたファミレスだからって理由ではなく、初デートだからなんだろう。 私が高槻さんとつきあい始めてまだ一ヶ月も経っていない。高槻さんも私も部活が忙しいため、デートらしいデートは一切したことない。 初めてのデートと言っても、一日中一緒に居たわけではない。私が所属する吹奏楽部の演奏会の帰りだ。私は舞台側だが、高槻さんはお客さん側だ。同じ学校のよしみと言うことで、今年は部活全員で来てくれたらしい。部活なので強制だが。 その演奏会で私がソロを成功させたら奢ってあげる、というのが高槻さんの言い分で、今この席に座っているということは無事成功させたと言うことなんだけれど。 それは建前でようやく時間を見つけたから誘ってくれたんじゃないのかなぁ、とか勝手ながらも乙女的なことを考えてしまった。もちろん高槻さんには言えないけれど。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加