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「決まった?」
「えっと……じゃあ、これで」
私はパスタを指さす。
トマトがベースのスタンダードなパスタだ。白いシャツと白系統のベストを着ているのではねたらマズいけど、好物だ。
……いや、デートだし口元につくのも避けるべきか。
なんて私が試行錯誤してると、高槻さんがふっ、と噴出すように笑った。
「決まってなさそうだけど?」
メニューを指差したまま固まる私を見ながら、高槻さんさ肩を震わせる。
「……高槻さんはどれにするんです?」
「どれにしようかなぁ、マキちゃんと同じにしようかな」
なんて口元に笑みを浮かべて揶揄うように言われ、私はふと思い出した。
高槻さんはあまり自分のことを話したがらない。自分のことを話すのがどこか気恥ずかしいらしい。そのせいかよく誤魔化される。
だから実は彼氏であるこの人の好物を知らない。というか教えてくれない。そういう人だと把握した上で好きだから、私は高槻さんが自ら教えてくれるまで待とうと思ってる。
それはともかく。
「で、もっかい聞くけど、決まった?」
「高槻さんと同じにしようかと思います」
そう言っていると、「へぇ?」と高槻さんが口元に笑みを浮かべた。この人が私をからかうときによく見せる仕草だ。
「俺、今これが良いかなぁって思ってるんだけど、お揃いでいいですか?」
そういって高槻さんはペペロンチーノを指さした。
丁寧にも『辛いので注意』という意味を持つ印が3つもついている。
「……同じにしません」
「マキちゃん辛いの食べれないもんね」
私はじとりと軽く睨むように高槻さんを見つめる。
「ペペロンチーノ好きなんですか?」と試しに聞いてみると、「嫌いではないよ」と相変わらず曖昧な答え方をされた。
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