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そしたら高槻さんのあまり大きくは変わらない表情が大きく揺れ動くかも知れない。いつもなら見せてくれない、意外な表情が見られるかも知れない。 でも、この人をからかおうと思ったのは何も今日が初めてではない。でも成功したことはない。いつだって返り討ちにされている。返り討ちにされるか、言葉巧みに自滅に運ばれてしまうか。 つまり対話してしまったら私に勝ち目はない。 一声で、この人を『あっ』と言わせられるような、何か。何か……。 なんて考え事が顔に出ていたのか、高槻さんはまた小刻みに方を震わせていた。 そこで二人分のお皿を持った店員さんが私たちの座っているテーブルの傍らに立った。  ◇ 「ごちそうさまでした」 お店を出てから、私はそう言いながら小さく頭を下げた。 「いーえ。安物ですいませんね」 「そんなことないですよ。誘ってくださってすっごく嬉しかったんですから」 「へぇ、嬉しいこと言ってくれるね」 高槻さんは私の頭をぽんぽんと撫でた。 「この後なら暇なんだけどね、時間的にも帰るしかないね」 「そうですね」 時刻はもう21時だ。 これで初デートが終わってしまうのはやはり寂しいけれど、仕方ない。 あとはこのまま駅に向かい、電車に乗るしかない。 「マキちゃんも眠そうだし」 「眠くないですよ。元気してます」 「はいはい。あんだけ頑張って疲れてない方がおかしいんだから、変な意地張らないの」 「……」 反論しようかと思ったけれど、口を開くことが出来なかった。 私は出かかった欠伸をなんとか飲み込んだ。
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