挨拶

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

挨拶

 サイコパスは、割と礼儀正しい。  その辺のクズより、その辺のギャルより、その辺のヤンキーより。  サイコパスは、礼儀を重んじる。 「おはよう」 「こんにちは」 「こんばんは」 「おはようございます」 「こんちは」 「こ~んば~んは~」 「おはーっす!」 「っんちは!」 「こんば~!」 「ういっす!」 「ちはーっす!」 「ばんわ~!」  挨拶は、多種多様だ。  正しい言葉遣いじゃないにしろ、意味はしっかりと伝わる。  どんなに子供でも、どんなにお年を召していても、挨拶の意味が分からない者はいない。  だからこそ、挨拶は大切なんだ。  サイコパスは、挨拶のできない者が許せない。  人の基本は挨拶である。  仮にその人間が、頭もよく、運動ができ、魅力的な人物であっても……挨拶ができなければ意味がない。  その人間に死刑判決が下されても異論はない。  サイコパスは、そのため人を殺す。  挨拶のできない人間にだけ焦点を当て、確実に殺す。 「おはよう」が言えない人間には、「おやすみなさい」を叩き込んでやる。  それが人として、通す筋ってものだ。  サイコパスは、夢を見る。  老若男女、どこに行っても、どこで出会っても、人種に差別なく挨拶を交わす世界を見たい。  いつの日か、そんな世界をつくってみたい。  挨拶のできない人間の存在を認めず、人々が笑顔で包まれ、礼儀を何よりも大切にし、人が人として生きる世界。  そんな世界を……  サイコパスは、つくりたい。  だからこそ……  サイコパスは、挨拶のできない者を許さない。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!