第4回   イージェンと月光の戦姫《いくさひめ》(上)(3)

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「そこまで知っているとは、ただの顔見知りではないんだな」  ティセアの縄も解いた。 「あなたのお名前は」  ティセアが迷った。だが、いずれにしても魔導師に嘘など通用しない。きっと顔を上げた。 「わたしは、ラスタ・ファ・グルア自治州の領主キリオスの娘ティセアだ」  そうだ、イリン=エルン王の側室でも、グリエル将軍夫人でも、リュドヴィク王の囲い者でもない。ラスタ・ファ・グルアの戦姫だ。  リギルトがまさかと目を見開いた。 「ティセア様…だと?」  うなずくティセアの顔をしげしげと見た。失礼と言い、手を握った。 「もう一度お名前を」  おそらく、嘘を言っているかどうか調べるのだろう。 「ラスタ・ファ・グルア自治州領主キリオスの娘ティセア」  リギルトがほうとため息をついた。 「たしかにめったな方ではないと思ったが」  扉を開けて、外で待っていた部隊長に貴族の姫君なので、丁重にお世話するよう告げた。部隊長と兵士長があわてふためいている様子がわかった。 「大げさにしないでくれ」  ティセアが立ち上がって、戻ってきたリギルトに言った。  リギルトが胸に手を当ててお辞儀した。 「了解いたしました、姫君」
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