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あまり眠れないと思っていたが、疲れもあり、ぐっすりと寝てしまっていた。日が昇ったらしく光で目が覚めた。
「姫様、行きますけど…」
仕度はいいですかとルキアスが声を掛けてきた。湧き水で顔を洗うからと起き上がった。水を飲み、顔を洗って、そっと薮の陰で用を足した。
日のあるうちに少しでも先に進もうと馬に無理をさせた。夕方、かなり息を荒らしていたし、少し足を痛めたようだった。
「一晩休ませてもこの足だとあまりもたないかも」
山道でしかも二人乗りだったので、余計に負担が掛かったのだ。ルキアスが簡単な地図を広げた。将軍宅にあったものを書き写したらしい。
「関門まであと少しですから」
明日朝からは、自分は歩くので、とにかく国境関門まで行きましょう、関門の街ならば馬も買えるからと早めに休むことにした。堅パンと水だけの食事だったが、少しもみじめではなかった。
木に寄りかかって身体を楽にしながらルキアスが話し出した。
「俺、イージェンに一の大陸で働かないかって誘われてたんです」
高地の村びとを助けてくれた魔導師のダルウェルがわざわざ誘いに来てくれたのだ。
「そのときは将軍閣下の下で働きたかったから断ったんですけど」
ティセアが差し出してくれた水の筒を受け取った。
「そうか、今からでも遅くないのでは」
ルキアスが首を振った。
「雇われ兵になったのは、軍人になって金を稼ぎたかったからだけど、ガーランドの王立軍はとうさんを殺したので、入りたくなかったんです、でも」
州兵になって、ふるさとを守りたいとつぶやいた。
「無法者や乱暴なやつらがいるし、異端のこともあるし」
ティセアがうなずいた。
「そうだな、そのほうがいいかもしれない」
ルキアスが今夜も見張るから休んでくれと言った。
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