逢瀬の時間

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「な……翔多……」 「え? ……んっ……」  浩貴は翔多の手から雑誌を取り上げ、放り投げると、再び彼をベッドへ押し倒し、唇を重ねた。  浩貴が強引に舌を侵入させ、絡ませると、翔多の形のいい眉が少し苦しげに寄せられる。  でも、それは刹那のことで、恋人同士の呼吸はすぐに熱く混ざり合う。  ……もう一度、翔多を抱きたい。  浩貴が狂おしい恋慕の赴くままに、翔多の体を淫らにまさぐり始めると、彼は少し困ったように身をよじった。 「だめ……だよ……、浩貴、もう時間……、おまえの親父さん……帰ってくる……」  そうだった……。  はあ……と小さく溜息をつくと、浩貴は翔多の体を解放してやった。  翔多がゆっくりとした動作で、カーペットの上に脱ぎ散らかした制服を身に着けていき、浩貴はクローゼットから適当にトレーナーとジーンズを出して身に着ける。  週の半ばの水曜日。  この日、浩貴の弟で、小学校五年生の:浩之(ひろゆき)は、友だちの誕生パーティに行っていた。明日が小学校の創立記念日で休みのため、そのまま友人宅に泊るという。  そういうわけで、父親が会社から帰ってくるまでの時間、二人はベッドで思う存分愛し合っていたのだ。  好きな人との逢瀬の時間は、あっという間に過ぎてしまう……。  浩貴が柄にもなく詩的なことを考えていると、玄関の鍵が開く音がした。父親が帰ってきたのだった。
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