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非現実的な話がさっきから続いている一方で、私はどこか楽しんでもいた。こんな珍妙な男には簡単に出会えるものではない。どうせ気ままな一人旅だ。話を聞くだけならただだろう。 「それは見てもみたいですが、しかしそんなことが可能なのですか?」 「無論です。例えば──」 死神博士はおもむろに魔法瓶の水筒を取り出し、コップの中に水を注ぎ、死魂玉をその中に入れた。その瞬間、死魂玉を中心にコップの中の水に、闇色のさざ波が起こったような気がした。それは夜よりも深い闇を思わせる漆黒の波動のように感じられた。 「さあ、どうぞ」 「これを、飲むのですか?」 「無論。毒も薬物もありませんから、ご心配なく」 男は一口ごくりと飲んで見せ、再び私にコップを差し出した。迷いはしたが、断り切れない雰囲気に私はとうとう押し負け、中身を一口飲み込んでしまった。その途端、周囲の景色がジェットコースターのように走り過ぎていった。     
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