プロローグ

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桜が散り始めた頃、こじんまりとしたホームに女の子が立っていた。猫目と小さな鼻の特徴的な顔をしている。そして少し不思議な雰囲気の彼女は夜飼みみ。何やら落ち着かない様子で電車を待っているのは今日が高校の入学式のせいである。かれこれ入学式は3回目だからそんなに緊張する必要はない、と言い聞かせていたものの…何と言っても今日はクラス決めもある。みみには高校に入ってからの目標があった。それは恋をすること。年頃の、しかも今時の女の子である。恋をしたことがない子なんてそういない。しかし、みみには1つだけ誰にも言えない秘密があった。それは「耳が良い」というものだった。 なんだそれ。意外に普通だと思ってしまうかもしれないが彼女の場合はちょっとちがう。 彼女の耳には人の心拍音、呼吸音、少しの声の上ずりなどまでが聞こえてしまう。距離で言えばおよそ50m先の人のささやき声までも鮮明に聞こえる。そして彼女はそこから人の感情を察知してしまうことができた。それもこの能力をバレないように注意して生きてきた結果、そうなってしまったのだ。 これが故に本当に本当に色々と苦労して来た。苦労話を始めたらキリがないが、それ故に人付き合いには相当の体力と精神力を必要とする。
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