プロローグ

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だから彼女には小学校中学校と通して友達と言える人の数は1.5人しかいなかった。一人は彼女の耳のことも知っている手鐘いぶ、0.5人の彼とのエピソードはまた今度することにしよう。 そんな彼女にとって恋愛とは未知のものでしかなかった。今まで気になる人はいたものの、少し近づいてみればその人の好きな人や嫌なところが見えてしまったり…自分のことをバレやしないか…バレたらどう思われるか気にせずにはいられなかったりと上手くいかなかった。 そもそもこの能力を人にバレたくないというのはみみのワガママでしかないのかもしれなかった。でも、もしもこの能力が世間にバレてしまったら…研究機関につれていかれるの?マスコミに大騒ぎされて世間には「耳がいい少女」として認知されるの?そうなってしまえば、みみは一生「耳がいい」という付随価値込みで見られることになる。そんなのはごめんだった。普通に生きたかった。調べることで誰かの役に立ったり、自分の能力の事を知れたりするのかもしれない。でもそんなに行動力のある方ではないし、誰かのために自分のやりたいことより義務をしいられる人生なんて嫌だ。15歳になるまでにたくさん考えたし、親とも相談した。みみの家はシングルマザーで母のメイは広告会社の重役でなに不自由なく暮らしてこられた。そして、理解のある人だった。だからみみにも、「あなたの好きなようにすればいいわ。でも結論を下すのは20歳になってから。その時にその能力とどうやって付き合っていくか決めればいいわ。」とそう言った。だからそれまでは、どうやって普通に生きていくかの試行錯誤の日々だった。
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