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しかし、最も強く印象に残っているのは、残念ながら早崎本人ではない。早崎が描いていた、あの絵。 脳裏に焼き付いて離れないあの青。眩い海と空の調和。すんげーものを見てしまった、と後悔のような、背徳感のようなものが胸に湧き上がってくる。 まああれだけのものが描けたら、そりゃナルシストになるのも当たり前か。もはや高校生の域を超えてるしな。うんうん。 さっきまで早崎のナルシストオーラに若干引いていたものの、廊下を歩き出して冷静さを取り戻してきたとき、その考えは徐々に変わっていった。だってあんな絵を描けるなんて、単純にスゲーもん。いくら早崎が性格ドブスイケメンだったとしても、そこはやっぱり褒め称えるべきもので。 けれど、ひとつだけ、どうしても気になることがあった。 あの青、すごく綺麗だけど……どこか、寂しそうな色をしていた、気がする。 あの絵に吸い込まれるようにして魅入ったとき、なんだか違和感を覚えたのだ。こんなに底抜けに明るい青のはずなのに、妙に絵には孤独感があるというか、なんというか……。 まあ、俺は芸術のことなんて全くわからないから、気のせいなのかもしれないけど。 もういい。早崎のことは忘れてしまおう。どうせこれから先、関わることはもう二度と無いだろうから。俺は何事もなかったように教室の扉を開け、中に入った。
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