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俺がこの高校に入った当初から、早崎はその見た目のおかげで大分目立っていたようだ。しかも本人はその見た目に沿うような、内向的で一匹狼のような性格の持ち主。そんな絵に描いたような個性派イケメンを女子たちが放っておくはずもなく、早崎は入学した途端に、学年で一番のモテ男となっていた。
まあ俺は早崎のことなんてホント、鼻くそレベルでどーーでもいいんだけど、やっぱりそういうイケメンの情報って何故か耳に流れてくるやん?あれ何なんやろな、ほんまに。まあそういうわけで、いくら人の名前覚えるのが苦手な俺でも、高校2年生になった今ではすっかり早崎の名前を覚えてしまったわけで。
「……ていうか、あいつそんなに絵がうまいわけ?」
頬を赤く染めながら早崎の絵を見つめている女子たちを、ぼんやり見ながら結城に問いかける。そういえば俺、早崎の絵、見たことないかも。
「お前見たことないの? まー正直ムカつくけどな、めちゃくちゃうまい。めっちゃ。なんか毎回絵のコンクールにも入賞してるらしいぞ」
「へー……」
めちゃくちゃ、って強調するあたりほんとに上手いんだろうな。まあ見たい気がしないでもないが、見たところで俺には芸術のセンス欠片もないから「なんかすごおい」で終わってしまうだろう。そんなもんだ、俺は。早崎とは雲泥の差、関わるべき人種ではない。
俺はもう早崎を見るのも飽きてきたから、改めて自分の絵と向き合うことにする。しかしはみ出しまくったこのクソ汚い油絵を見ていると、早崎の才能欲しかったなあ?ってちょっと思った。ちょっとだけだけどな。
これは今年も美術は評定3だな。確信しながら、俺は青の絵の具を塗り進めていった。
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