あの頃よりも、彩度が高く見えるんだ

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走る。 ひたすら走る。 もうすぐで遅刻になってしまう。 僕の学校の前には黒い坂がある。 夏は熱く、冬は冷たくそびえ立つコンクリートの長い坂道。 深く呼吸して、僕はそこを駆け上がる。視界を木々の緑が横切っていく。 未成熟な筋肉は汗を滲ませ、強く風をきって爽快感さえ覚えた。 校門をくぐるとグラウンドが目に映る。 人工芝がよく目立つが、遠くまで見渡すと茶色い砂埃が上がる土の場所もあった。 泥まみれになって叫ぶ朝練を思い出す。運動部の連中は五月蝿いし、馬鹿して先生に叱られるのを何度も見てきたが、あの凄まじいエネルギーには圧倒されてばかりだ。 校舎の真っ白な階段を登ろうとしたその時。 「おーーーーーい!」 見上げると、彼らだった。 もう一緒に机を並べて英文を読むこともなければ、ましてやお揃いの制服を着ることもコスプレになってしまったけれど。 「ひさしぶりーーーーーーーーーっ!」 笑って手を振る友人たちの後ろでは、雲ひとつない快晴が蒼く背景を彩っていて。 懐かしさで水彩画のように滲む前に、僕は思わずその美しい青春にカメラのシャッターを切った。
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