うろつく

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今年は暑すぎた。だから魔が差したんだ。夜中に目撃情報があって、画像を見たが好みのタイプだった。眠れなかった俺は、近場の公園だったのをいい事に、直接見に行くことにした。こんな時間にひとりでふらふら。あわよくば、イイコトできたりして...とわくわくしてきた。ネットの情報が3時間ほど前、もうここにはいないだろう。ああ、我ながらバカ過ぎたなあと思っていた時、後ろ姿を見つけた。いた。マジか。声をかけてみた。「こんな夜中にどうしたの?」無難な台詞しか出てのないのか。だせえ俺。振り向くと、息を飲むくらいの美人。「人寂しくて...温めていただけます?」暑苦しくて家を出たのをすっかり忘れて、いいですとも♪ウェルカムですとも♪鼻の下がのびきった俺は、美人からどんな風に映ったのだろうか。腕をグッと捕まれて、唇を奪われたのは覚えているが、気がつけば、公園に転がっていて、青空が眩しかった。わんこを連れた奥さん達の、異様なものを見る目に耐えながら、逃げるように自宅に帰った。何も覚えていない不甲斐ない俺にがっくりした。後日、女装をしたおっさんが、言いがかりをつけ金を巻き上げていた事件を知る。おっさんは七十だった。嘘だろお...捕まったおっさんは隣の県在住だし、ネットの写真は保存してあるが、美人だった。さすがにわかるだろう...と俺の頭はぐるぐるぐるぐる...ただ、確かなのは、唇が意外と柔らかかったという事だけである。
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