第1章  ワンダーランド

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 目覚めるとそこには草原が広がっていた。  天気も良好、風も吹いて草原が果てしなく続いている。  VRの様な完璧な現実世界がそこにある。体はしっかりと動く。体を起こして、《メインメニュー・ウインド》左手で操作すると、《ログアウトボタン》が存在していなかった。  ここはVRMMOの世界である《ワンダーランド》だ。魔法や剣、銃などの異次元の世界である。  自分はこの世界に閉じ込められたということになる。つまり、脱出手段が見当たらない。 「おいおい。マジかよ……。運営の方はどうなっているんだ?」  独り言を言いながら、目の前の大樹に向けて歩き出す。ここは一度、見たことのある道だ。初期のころに訪れた覚えがある、 「まずは、街の方に向かった方が早いかもしれないな」  表示されているマップを見ながら、ここから一番近い街を探し出す。自分のアカウントそのままになっており、キャラや服装、装備など変化したところは全く見当たらない。すると、《電話》に呼び出しの表示がされた。  ボタンを押すと、相手プレイヤー名が表示される。『シンク』というプレイヤー名には心当たりがある。 「なんだ、お前か」 『なんだとはなんだ? それよりもこの世界はどうなっていやがる! ログアウトもできんぞ』  何もつけずにその場で話しているのにシンクが大声で叫ぶせいか、耳障りがする。いつも聞きなれた声なのに懐かしいような声だ。 『それよりもお前、今、どこにいるんだ? なぜか、全プレイヤーがこの世界に閉じ込められたらしい。』 「マジでか? それよりもお前、馬鹿でかい声出すなよ。あいつ一緒になるぞ。声のでかい奴に……」 『いや、あいつよりかは俺の方がマシだ。奴は、どこにいても馬鹿だから死にはしないだろう。それよりもお前の方は大丈夫なのか? ハヤト』 「まあな。俺の方は、なぜか草原にいるよ……」  苦笑しながら答える。なぜ、草原にいるのかハヤトにも分からない。 『そうか。俺も大体落ち着いたら連絡する。あ、そう言えば言い忘れていたが、くれぐれも気をつけろよ……』 「ああ、分かっている。」  電源ボタンのところを押すと、通話終了と表示された。再び、《マップ》のところを押し、目の前に《ワンダーランド》のマップが表示される。ここから近い街と言ったら、北に約三キロに大都市がある。  リヴァプール――
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