始まりは困惑の朝焼け

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 どっと疲れが襲ってきた。思っていた以上に緊張していたみたいだった。それでも、電話してみて良かったと思う。僕の記憶が間違っていなかったと言うのが分かっただけでもかなりの安心感だった。  そうだ。写真。奈良崎に言われた事を思い出す。自分の部屋から昔の携帯を引っ張りだす。折りたたみ式のフォルムを見るだけで懐かしい気持ちに襲われる。  電源は落ちていた。起動しようとしてみたが電源が入らない。バッテリーが切れているのだろう。充電器も引っ張り出してコンセントと携帯をつなぐ。  電源ボタンを長押しして起動する。ゆっくりとした起動が行われる。電源が入ったところでカメラフォルダを開く。年度事にフォルダわけされている中から五年前のフォルダを開くと数十枚の画像データが保存されていた。  その中の一枚の写真を開く。かなり画素は悪かったが顔ははっきりと見える。  僕はぴたりと固まってしまった。油断していたともいえる。西尾の言葉に安心しきってしまっていた。だからこそ、その衝撃は僕を貫いた。五年前の写真。  そこには僕と知らない女の人が一緒に写っていた。
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