始まりは困惑の朝焼け

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「じゃあ、先輩。また明日会社で」  奈良崎は手を上げてその場を立ち去ろうとする。 「お前、明日も会社に来るつもりなのか?」  驚いて呟く。 「当然ですよ。今までだって、普通に出勤していたでしょう?」  今までだって。そうか。奈良崎は美里さんが初めてではないのだ。こんな事を何度も繰り返してきたのだ。そして、日常を過ごしている。むしろ、奈良崎にとってはこれが日常なのかもしれなかった。  ちらりと一度振り返って奈良崎が僕の顔を見る。それは何かを測っているような表情だった。 「奈良崎。明日は朝から会議だから、遅刻するなよ」  奈良崎がまた薄く笑った。 「僕が遅刻したことなんてないでしょう?」 「いや、それは嘘だろ」    思わず素で答えた所で、奈良崎はまた笑った。 「そうでした。今日は帰ったらすぐ寝る事にします」  奈良崎はそれだけ言うと頭を一度下げ、夜の道へと消えていった。
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