死者は語れず使者にはなれない

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 忘れていいはずなど無いと分かってはいても、あまりに変わらない態度にこちらが戸惑ってしまう。しかし、奈良崎は別にその事を隠すつもりはないらしい。  怪訝な顔をしていたのだろうか、奈良崎が近づいてきて耳元で小さくささやく。 「そんな顔で僕を見ないでくださいよ。心配しなくても、なにもしたりしませんよ。僕だって殺す人を選ぶ権利もありますからね」  その言葉にぎょっとする。奈良崎は僕の肩を軽く叩くと小さく舌を出してロビーを歩いていく。まるで悪戯をした子供のような態度だった。  僕は呆然とその後ろ姿を眺めることしかできない。どうにも肩透かしを食らわされているような感覚だった。
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