死者は語れず使者にはなれない

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「先輩!」  奈良崎が立ち去った方向とは反対から声をかけられて振り替えると、背の高い女の人が駆け寄ってくる。 「渡瀬。どうしたんだ?」  身長が高く、スタイルもいい為大人びて見えるが対照的にどこか幼さの残る顔が愛嬌を振り撒いている。当然のように社内でも人気がある。  そんな人物が僕に話しかけてくるのは単純に、僕が渡瀬が入社したときの教育係だったからというだけの理由で、それ以上の意味は本当にまったくない。  一度会社の飲み会で僕のことをどう思っているのかと同僚に聞かれているのを見た。というか僕の目の前で会話をしていた。彼女の答えは「先輩です。仕事を教えてくれる人です」だった。  ざっくばらんで適当な面が彼女にはあった。それが付き合いやすさをうみ、さらに彼女を人気者にしていた。
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