死者は語れず使者にはなれない

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8 「……というわけなんだ」  家に帰るとしずるが心配そうな顔で出迎えてくれた。一体何があったの? と聞いてきたので今回の一連の話を詳しく話した。長い話にはなったがしずるは黙って聞いてくれていた。 「大変だったんだね」  しずるは神妙な顔で一言労ってくれる。 「結局、僕はあの二人の役には立てなかった」    渡瀬を助けた事に後悔はない。でも、阿佐田を止められなかった事は悔やんでも悔やみきれなかった。 「ケイ君は後悔しているの?」 「後悔か……後悔しているというよりも反省しているのかな」  後悔することを防ぐことはできない。でも後悔だけしていても何も生み出さないのも事実だ。反省はしても後悔はしない。  いつもそう考えるようにしていた。
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