183人が本棚に入れています
本棚に追加
/1000ページ
ジーっと僕を見ている視線を感じて隣を見てみると、しずるが僕の弁当を覗き込んでいた。
「中身は一緒だよ?」
「そっちの方が美味しそう」
言って箸を僕のアスパラ巻きに向ける。いや、一緒だって。と言いながら弁当箱を差し出す。箸がすっと伸びてきて弁当箱からアスパラ巻きを誘拐していく。
さっと口に含むと「んー」と言いながら顔をくしゃくしゃにする。
「おいしー」
ああ。この表情を見ると作ったかいがあったなと思う。
「どうして、こんなに美味しいの?」
「外で食べているからじゃない?」
「いや、私が作るより美味しい気がする」
「気のせいでしょ」
しずるは決して料理が下手なわけでもないし、僕が料理が特別上手なわけでもない。
「敢えて言うなら、人に作ってもらったから美味しいんじゃない」
「それだ!」
箸を僕の顔に突き付けてしずるが笑った。釣られて僕も笑う。
最初のコメントを投稿しよう!