初めてを、もう一度。

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「…はい」  遠慮なく不機嫌な声を曝し、一言だけを返す萌ちゃん。  こんな塩対応されても怯む気配のない、強靭な精神の本郷先輩。 「俺も原に用事があるんだ。一緒に行っても良いかな」 「一緒に行く必要、全くないですよね」 「部活中なのに、何度も私用で引き留めるの悪いから」 「だからって同行の必要はないと思います」 「そうか。判った」  うん、と一つ頷いた先輩は、 「俺は、君たちの後ろをついていくよ」 「気持ち悪いんでやめてください」  あらかじめ二人で打ち合わせをしたのではなかろうかと思えるほど、息の合った気の合わなさだ。私はここで笑うべきなんだろうかと本気で悩んでしまう。 「美希ちゃん、違うから。そんなキラキラした顔しないで」  私は一言も発していないのに、ツッコミを入れてくる萌ちゃん。コントじみたやり取りだった自覚はあったらしい。  萌ちゃんのセリフが追い討ちとなり、我慢しきれず私の口から少し笑い声が漏れてしまった。 「違うって。もーぉ」  言いながら、萌ちゃんも笑顔になる。 「とにかくおつかい済ましちゃお」 「ん」 「付き合ってくれてありがとね」  萌ちゃんは、私を促しながら歩き出した。  何気なく目の端で先輩の様子を確認する。  本郷先輩は、 穏やかに微笑みながら、私たちの後ろを歩いていた。  ※   ※   ※
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