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 冬休みの真夜中、推薦入試のおかげで受験勉強と無縁になった私は柔子の部屋で寝ていた。隣では柔子のいびきとお腹の音が部屋中に響いている。  寝るまでに変なところは特になかった。家もごく普通のアパートだし、夕食も安いバイキングの味程度だった。夜勤に向かう柔子の母親にも会った。少しやつれているが、微笑むと柔子そっくりで優しそうな人だった。  それよりも、私の母がお泊まりを了承したことに驚かされる。私の入試すら先回りしてアレコレしていた母のことだから、許可してくれないと思っていた。なんでだろう。  しばらくして、隣から物音がして柔子のいびきとお腹の音が止まる。横を向くと柔子がいなくなっていた。トイレかな。部屋のドアを見ていたが、一向に戻ってくる様子はない。まさか、隠れて何かしているのかも。  布団から起き上がり、部屋のふすまを少しだけ開けリビングを覗く。そこには何かを食べる柔子の背中があった。わざわざ寝ている部屋に背を向けているなんて怪しすぎる。  確信を持った私は部屋のふすまを開けた。 「何してるの?」  ふすまの音にびっくりしたのか、巨体が一瞬跳ねて振り返った。右手に箸、左手には茶碗、口にはお菓子のカスがついている。 「見つかっちゃったかぁ」 「何食べてるの?」  茶碗の中を見ると、ご飯にきつね色で細かく砕かれたものがのっていた。さらに、白くねばついた液体がかけられている。 「ポテチご飯。た、食べる?」  柔子は問いかけると再び食べ始めた。私は言葉を失う。不健康の極みだ。しかも、オシャレも贅沢感もない。しかし、それを口に入れ噛み締める柔子は天にも昇るような笑顔だ。冷凍食品の味とかは想定できるが、これは想像がつかない。こんなのデブまっしぐらだし、安いし地味だし、ご飯にポテトチップスかけただけだ、けど……。
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