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「こんなの初めて」
「そりゃあ、しずちゃんのお母さんはこんなの出さないだろうからね」
「やわちゃんのお母さんは出してくれるの?」
「まさか。自分でやってみた、というか」
そのとき、頭の中に自問が生まれた。私は今まで自分からやったものはあったのか。振り返ってみても、いつも母をあてにしてばかりだった。
「どうしたの?」
柔子が心配そうに私の顔を覗き込む。私は慌てて首を振った。
「いや、別に。ホントに美味しいなって」
「よかった。嫌われたらどうしようと思ってた」
意外な一言に箸が止まった。確かに、今まで変だとは思っていたが。
「嫌われるってどうして?」
「だって、デブだし貧乏だし。それに加えて、これ食べてるとか。でも、美味しいから止められないし」
そういえば、柔子が私以外の人と仲良くしているところ、見たことがない。いじめとは違うんだけど、遠ざけられていたというか。
「だけど、しずちゃんはこんな私でも一緒にいてくれて。私、とても嬉しかった」
柔子はいつもの笑顔を見せた。彼女は純粋な気持ちで一緒にいてくれていたのに、私は……。目に涙が溜まるのを感じ私は茶碗と箸の方に向き直る。
「しずちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ。早く食べて寝よ」
そう言ってポテチご飯をかきこんでいった。さっきよりしょっぱい味がした。
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