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「あ、やっべ。俺日直だ、黒板消さなきゃ」
男の子はたちあがると、そそくさと逃げるように黒板に向かう。
「ごめんねぇ、びっくりしたでしょ。
あいついつもいきなりだから」
女の子は申し訳なさげに私に向かって両手をあわせる。
「でもぉ、根はいいやつなんだよ。だから気にしないでね」
彼女の言葉に、私がこくんと頷くと、女の子はよしよしというかのようににっこり笑顔を向ける。
「ちなみにあたしもその小説好きなんだ。後また話しようね」
え、と聞き返そうとした瞬間、始業のベルが鳴り響く。
ガタガタと席に戻る生徒たちにまぎれ、男の子も自分の席に戻ってきた。
先生がきたと同時にしん、と静まりかえる。
教室という白い世界が再び訪れる。
けれど。
不意に男の子が小さく振り向くと、私の机の上に折り畳まれた小さな白い紙を置くと、そして再び前を見た。
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