第三章 二匹+二匹??

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『もしもし…今病院なの。もう少ししたら掛け直すね。』 冷静を装い静かに電話を切った。 『掛け直すね、か…』 消えそうな声で、彼が呟く。 『違うの…これには訳があってね。』 焦るアタシに 『もういいから…』 追い打ちをかける冷たい一言。 『聞いて…』 『聞くまでもねぇだろ…そういうことな…』 冷たい視線に何も言えなくなってしまう。 ………… ………………… 『てか俺よりアイツってことな…』 きつい口調でその言葉だけ残し去ろうとする。 ―アイツだけは辞めてくれ ――酒井潤だけは 頭を過った。 今はまだその深い意味に気付くことなんてこれっぽっちもなくその言葉だけが頭の中でくるくると回っていた。 『待って…ちょっとお願いだから待って。』 その懸命な声も届かず、後ろを振り返えってはくれなかった。 …… …………… …… …………… 『あぁ、居たよもう。ねえちゃん遅いんだよ。まだジュース買ってないの?みんな待ってるよ。』 駆け寄り腕を引っ張る優太にそのまま連れられ病室に戻る。 楽しそうなみんなの声もその光景も色褪せて見えてしまう。 あの時と、そう入学式と同じだ。 このままなんて絶対に嫌だ。 ちゃんと話そう。 話せばきっとわかってくれる。 だけど何で彼はこの病院にいたのだろう。 ここは四国だ。 運命??っなわけないか…… でも偶然にしては有り得ない場所だよな。 もう今はそんな事より話さなきゃ。
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