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第四章 おりの中の子羊
『ねえちゃん遅い!もう待ってるんだからね。』
おばちゃんの家に戻ると仁王立ちしている優太が手に折り紙を持ち怒っている。
よく見ると手のひらにちょこんと鶴が乗っていた。
『もう僕なんて八枚も折ったんだから…ねえちゃんもちゃんとやってよね。』
さっき約束したことを覚えてくれていた。
てかこっちが忘れてたよ。
ヤバッ。
『ごめんごめん!』
頭を下げ、ふと目を横にやると見覚えの無い靴が玄関に揃えておいてある。
26センチはあろうメンズものの靴だ。
もしかするともしかして…
中に入ると
やっぱり…
『あっお帰り。ゆまちゃん遅かったね。』
家族に交じり千羽鶴を折っている酒井潤がいた。
『これ見てよ俺が折ったんだ。』
自慢する彼の前には金銀銅とまるでオリンピックのメダルのような色でしか折られていない鶴がある…
嫌、折らせてもらってないといったほうが正しいのだろう。
隣を見るときちんと正座をしたお父さんが折り紙が入っている袋からその三色を見つけだし一枚、また一枚と彼の前に置いていた。
『もうお父さんそんな事までやらせていい加減にしてよ…しかも金銀銅って。』
メダルか…まったく!
心の中で突っ込みを入れた。
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