第四章 おりの中の子羊

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『違うんだ、俺がやりたいって言って勝手にお邪魔させてもらったんだ。案外楽しいよ。 折り紙なんて幼稚園の時以来だよ。だから鶴の折り方なんて忘れちゃっててお母様が教えてくれたんだよ。』 『嫌だ、お母様なんてぼっちゃんたら…』 酒井潤の肩を軽く叩いたつもりなのだろうが痛がってるよありゃ絶対… 『もう、お母さんってば。』 軽く睨むと 『せっ、責めるの?』 でたでたそのセリフ。 まったく!本当に誠に… 『楽しそうだね、ゆまちゃん家はさっ。羨ましいよ。こういうのを家族団欒っていうんだろ。いいな。』 笑顔で言ってくれたがなんだか淋しそうに見えた。 なんだかな… これが羨ましいだなんて。 『そう言えばおばちゃんのお見舞いにも行ってくれたんでしょ? ありがとう。喜んでた。』 『えっ?あぁ…………』 『お母さんアタシたち帰るけど、鶴折ったら送るから絶対おばちゃんに渡してね。』 小指を出し指切りの真似をする。 『わかってるわよ、ゆま、優太、明日から頑張るのよしばしの別れだけど、必ず必ず…』 うんうんと頷く。 『必ず、必ず。』 うんうんうんうんと頷く。 『給食費振込むから…』 ってそっちかい! はぁ貧乏にも程があるよ… お父さんを見ると 『二人とも…』 上を向き涙を拭っている。 『もうお父さんたら…』 お母さんもつられ涙ぐみお父さんの肩を擦っている。
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