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小学5年生 1
引っ越し屋の精鋭たちが、軽く会釈してトラックに乗りこんだ。
その中の一人がトラックの窓を開けて、さわやかな笑顔に似合う白い歯をちらりと見せた。
「それでは、飯田様。失礼致します。」
そう言って、頭を下げた。
「本当にありがとうございました。」
母もそう答えて軽く会釈をした。
引っ越し屋のトラックが鈍い力み声を上げて走り出した。
母はキラキラした笑顔で手を振り、走り出すトラックを見送った。
私と弟は一歩下がって、走り去るトラックを棒立ちで見ているだけだった。引っ越し屋のトラックが見えなくなると、母は空を見上げた。
「これから、しばらく忙しくなるわね。」
これからやってくる嵐の猛威を覚悟するような口調に似ていると思った。
ひかりも母のマネをして、空を見上げた。
真っ青な空に綿菓子のような雲が浮かんでいる。
風が優しく撫でていく。
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