小学5年生 4

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「もうすぐ、夏休みだね。休み中、どこかに行くの?」 学校からの帰り道、もたついた緑の匂いの中を、おさげ髪の美奈子ちゃんと二人で下校している最中だった。 「おばあちゃんの家に行くかな。」 ひかりは去年の夏休みを思い出していた。 夏休みは、朝早く起きて学校に行かなくてもなくてもいいというだけの日々で、家のクーラーの下で漫画を読んだり、ゲームをしたりの毎日になる。 友達とも会う機会も減るし、外に遊びに行けば、たちまち熱中症で倒れるほどに暑い。 ダラダラと退屈を持て余し、気が付くと宿題に追われるのが夏休みの印象だ。 おばあちゃんの家に行っても、近くに海がある訳でもなし、川遊びができる訳でもない。 温泉が出て、有名な神社があるだけで、その他は住宅街が広がり、おばあちゃんの家に缶詰状態になる。結局、自宅にいる時と、さほど変わらない。 楽しいとは程遠い。 「いいな、行くところがあって。」 美奈子ちゃんは、そう言って口を尖らせた。 「でも、楽しいって感じはないよ?」 「私の家さ、農家でしょ。夏は忙しくて旅行どころじゃないの。おばあちゃんの家も隣だし。夏は、畑のお手伝いって決まっているのよ。最悪でしょ?」 美奈子ちゃんは、肩を落とし、深いため息をついた。 「畑のお手伝い?」 「そう、家ね、かぼちゃ農家だもん。」 ひかりには、“畑のお手伝い”って言葉が魅力的に聞こえた。
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