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テレビ番組で、お笑い芸人やアイドルがカラフルなつなぎを着て、収穫を手伝いする場面をよく見かけた。
その後の試食タイムで、必ず言うのだ。
「東京で食べる味と全然違う!」
東京の野菜だって、地方の産地から運ばれてきた物ばかりのはずなのに、違う意味が分からない。この人たちは、その場の雰囲気にのまれている。
そう思って見ていたけど、もしかして、本当に味が違うのかもしれない、とも思えてくる。
だから、畑には興味があった。
「いいな、美奈子ちゃん。私もお手伝いしてみたい。」
ひかりの言葉は、美奈子ちゃんには意外に映ったようだった。
動きを止め驚きの表情を浮かべていた。
「この町に住んでいる人がそんな事を言うなんてびっくりした。ひかりちゃん、変わってるね。ひかりちゃんさえよかったら、夏休みおいでよ。午前中、作業しているから。」
「いいの?楽しみだなぁ。」
ひかりは、この町に来るまで大きな畑を見たことがなかった。
農家という響きも、ひかりには斬新だった。
夏休みが楽しみ、心からそう思えた。
ひかりにも、不思議だったが、嫌だったこの町への想いはどこかに消え失せていた。
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