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ひかりは、もう一度辺りを見回して再びため息が出た。
面白みのない田舎町だ。どこに目をやっても、緑、緑、緑・・。
こんな町に住むなんて嫌だ。
すでにうんざりしていた。
父の都合でこの鹿児島県伊佐市に引っ越してきた。
母は楽しんでいるようだが、小学校5年生のひかりにとって、引っ越しは災難でしかない。
引っ越しが決まったころから、どす黒い気持ちがカウントダウンを始めた。
その間、ためいきばかりが口を通りすぎた。
そして、ついにこの日を迎えてしまった。
よりによって、どんでもないド田舎に引っ越した。
この小さなアパートの一室が、今日からひかりの自宅になる。
階段を三段上って右側ドアを開けた。新しい匂いがする。
ひかりは、玄関で靴を脱ぎ、リビングに繋がるガラス扉を開けた。
無機質に置かれた段ボールが並ぶダイニングルームは何故だか広く感じた。
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