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お昼を済ませると、今度は曽木発電所遺構へ行く。
これも毎日の日課だ。
「睦君、いる?」
「やぁ、ひかりちゃん。今日も来てくれたんだね。」
「うん。」
夏休みが始まって、2週間が経過していた。
「ひかりちゃん、随分と日焼けしたんじゃない?」
ひかりをしげしげと見ながら、睦君が言った。
「農家のお友達の家で、収穫のお手伝いをしているの。すごく、楽しいんだよ。」
「そうなんだ、ひかりちゃん。素敵な事をしていたんだね。」
水風船が弾けるような笑顔で、睦君が言った。
睦君は、いつも沈着冷静な感じで、愛嬌があるとは程遠い感じ。
そして、透き通るような澄み切った視線も、睦君の想いを反映しているとは思えない。
優しい微笑みがただ浮かんでいる。
そんな睦君が、ふと見せる感情がほころんだ自然な表情に心がキュンとする。
「睦君は、いつも外にいるのに、どうして焼けないの?」
ひかりには、出会った頃と変わらない、色の白い青年のままの睦君が不思議でしょうがない。
自然と質問を口にしていた。
「僕は、・・日に焼けない体質なんじゃないかな?」
2拍の間をおいて、睦君が答えた。
「いいね、睦君。羨ましい。」
それから、ぼんやり睦君の腕と自分の腕を見比べていた。
自分では自覚は無かったが、睦君が言う通りかなり日焼けしている。
ハンバーグみたいな色だな・・自分の腕をマジマジと見ながら考えていた。
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