小学5年生 5

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「ひかりちゃん、明日はここへ来てはダメだよ。」 唐突に、睦君が真剣な眼差しを向けて言った。 「どうして?睦君、用事でもあるの?」 とっさにそう聞き返した。 もしかして、何か悪い事でもしちゃったのかなぁ・・少し、心配になった。 睦君のこんな表情は初めてだったからだ。 「ひかりちゃんが、疲れているからさ。」 睦君の解答に、そっと胸をなでおろした。 待って、それって、もしかして、睦君は私の心配をしてくれてるって事?かな? キャー、どうしよう。睦君の気持ちが嬉しい。 「睦君、心配してくれるの?優しいんだね。ありがとう。でも、私は大丈夫。」 ひかりは、“自分は頑丈だけが取り柄だ”と、自負していた。 それに、この伊佐市は、前に住んでいた街よりも過ごしやすい。 だから、多少の疲れがたまっていたとしても、なんて事はないと思っている。 「ひかりちゃん、僕の言う事は聞くべきだよ。」 睦君の口調は、子供を諭す先生のようだった。 「分かった。」 ひかりは素直に返事をした。 睦君は、私を心配してくれいるんだ。嬉しくて、にんまりとしてしまいそう。 気を付けなくちゃ・・。 「今日は、涼しい木陰で、ゆっくり話でもしょうか。」 「そうだね。」 睦君といると、どこからともなく心地よい風が吹いてくる。 暑く熱せられた空気が、あっという間に入れ替わった。 この風はどこか、睦君に似てる。 そんな気がした。 気温に鈍感なのか、睦君を追いかけるように吹く風のせいなのか、理由は分からないけど、隣で朗らかに笑う睦君は、相変わらず、ひょうひょうとしている。 私は汗びっしょりなのになぁ、ひかりには不思議だった。
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