小学5年生 5

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「いつもありがとうございます。これ、野菜です。」 「こちらこそ、いつもありがとうございます。」 「たぶん、ひかりちゃん、熱中症になったかもしれません。申し訳ないです。」 「本当ならば、こちらからお礼をいわなくてはいけないのに・・」 美奈子ちゃんのお母さんとひかりの母が玄関で話している声が聞こえて来た。 家に辿りついたひかりは、クーラーが効いたリビングでひんやりした風に当たっている。 じんわりと外側の肌から浸食するように冷気が異常な温度を取り去る。 べっとりとした汗が、少しずつ乾き始めて、沸騰した血液が、冷静さを取り戻していく。 早々に引き上げて行った美奈子ちゃんのお母さんの余韻がまだぶら下がっている母は、 よそ行きの顔でリビングに戻って来た。 「ひかり、大丈夫?2.3日、ゆっくりしていなさいね。」 そう言った母は、心配そうな顔に変わっていた。 「うん・・」 ぼんやり答えるひかりを見つめながら、おでこに手を当てて言った。 「布団でゆっくり寝るといいわ。ひかりの体は弱っているから、無理はダメよ。」 優しい母の顔が、ひかりを安心させた。実は心細かった。 「うん。」 ひかりは自分の部屋に戻ると、布団の上に寝転んだ。 床に直にひかれた布団はエアコンの冷気を浴びて、ひんやりしていた。 肌に触れる温度が心地いい。 確かに疲れている。布団に横になって、始めて実感した。 ひかりは横になって間もなく、深い眠りに落ちていった。
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