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辺りを見渡せる豪華な作りの東屋に、腰かけていた。
8角形の東屋は、メリーゴーランドに形が似ていると、ひかりは思った。
八の字のベンチが向かい合わせに配置され、真ん中には丸い大きなテーブルが設置してある。
真向いには睦君が、いつもの開襟シャツにスリムな黒いスラックス姿で座っている。
ここはひんやりしていて、気持ちがいい。
睦君が踊っていた境内と同じ世界にいるのだと、肌で分かった。
ここも、あの境内と同じ空気が流れている。
辺りは深い霧がかかり、エフェクトのかかった柔らかい光が差している。
ここから少し離れた場所には、切り立った岩肌が微かに見える。
どうやら、ここはどこかの崖の下のようだ。
まるで、掛け軸の中の世界みたいだ。
切り立った岩崖は、何者も寄せ付けない冷たい表情をしているが、それでいてため息が出る程に美しい。
東屋の隣に立つ建物は、からぶき屋根の古民家だ。
ひかりが辺りを見回していると、
「ひかりちゃん、大丈夫かい?」
柔らかい笑顔の睦君が口を開いた。
睦君は、曽木発電所遺構にいる時とは、どこか雰囲気が違う。
そんな気がした。
「睦君が助けてくれたの?」
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