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ひかりは、後ろめたい気持ちから、睦君を真っすぐ見ることも出来ず、下を向いた。
「来ちゃダメだって、言ったでしょ。」
どうしよう・・睦君に嫌われたら・・。そう言った睦君の顔を恐る恐る確認した。
睦君は柔らかい笑顔のままで、ひかりを見ていた。怒っている感じはしない。
ひかりは、ホッとした。
そう、確かに昨日、睦君にここへ来てはいけないと言われていた。
決して、忘れてしまった訳じゃない。
それよりも、睦君が何者か聞かなくてはいけないという思いが勝ってしまった。
だから、ここに来た。怒られても仕方がない事をしている自覚はあった。
「睦君、ごめんなさい。」
「いいんだよ、こうしてひかりちゃんが元気でいてくれれば。」
「うん、ところで、ここはどこなの?」
「ここか・・ここは僕の世界。僕の家だと思ってくれていい。」
睦君は両手を広げ、姿勢を正した美しい所作で答えた。
「睦君の家・・」
「そうだよ。」
「睦君、あのね。今日、睦君に会いに来たのはね・・。」
言い出しづらい。そうなのだ・・本当は、ひかりにも分かっている。
睦君は、この話をずっと避けている。睦君には事情があって話したくないと思っている。
睦君の気持ちも分かっているのに、それでも、睦君が知りたい。
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