1人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「ひかりちゃんは僕が知りたいんだよね?」
「そうなの。・・だから、ここに来たの。ごめんなさい。」
「ひかりちゃん、それを知ったところでどうするの?」
「私ね、睦君がどんな人でも変わらないと思うけど・・もっと、睦君を知りたいの・・。知りたいだけじゃ、ダメなのかな・・」
「分かった。ひかりちゃん、それなら一つ、約束してくれないかい?
僕の記憶は、君の中だけにとどめてほしい。
それが出来ないなら、君の中の僕は消すしかない。交換条件だ。
どう?出来るかな?」
静かにしゃべる睦君は、ひやりとした威圧感を放ち、強い意志と特別な力を感じさせた。
その威圧感の強さに、武者震いがした。
おそらく睦君が持つ特別な力に抗う事は不可能だろう。
天使なのか、悪魔なのか、幽霊なのか、妖怪なのか、見当もつかないけれど、この人は間違いなく人間ではない。
ひかりの直感がそう告げていた。
それでも、この人が何者でも構わない。ひかりの心に迷いはなかった。
「出来るよ。睦君を忘れたくないもん。絶対、失くしたくない。」
「分かった、君は出来ると信じるよ。約束は死ぬまで忘れないで。いいね?」
“約束は死ぬまで忘れないで”
そう言った睦君の声は、凄みを含んだ強くて深い響きだった。得体の知れない圧は、怖いくらいだ。
それでも、約束を交わす相手が睦君なのだから、迷いは微塵もなかった。
「絶対、守る。」
ひかりの気持ちは変わらない。変わるはずはない。
睦君は、決心したように頷くと、話を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!