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ひかりが目を開けると、見ず知らずの天井があった。
「目が覚めたのね。」
母が、安堵の表情でひかりの頬を優しく撫でた。
ひかりはぼんやりしながら、母を見つめて再び天井を見た。
それからゆっくり回りを見回した。
見たこともない白い部屋で点滴をされ、知らないベッドに横たわっていた。
自分が、どこにいて、どんな状態なのか、見当がつかなかった
「ここは病院よ。ひかりは道端で倒れていたって、ここに担ぎ込まれたのよ。
なかなか、目を覚まさないから、心配したんだから。」
「お母さん、心配かけてごめんなさい。」
ひかりの素直な気持ちが言葉になって口から離れた。
母は、普段では決して見る事の出来ない優しい顔をして言った。
「いいのよ、ひかりは無事だったんだから。もう少し寝たら、帰りましょう。いいわね?」
母の深い愛情を感じた。この顔はまるで魔法だ。
嘘みたいに緊張や不安が消えて心がくつろいでいき、やたらと素直になってしまう。
「うん。」
ひかりは、ゆっくり目を閉じた。
睦君の想いも一緒にかみしめていた。
(睦君、ありがとう・・。)
ひかりの目から、こらえきれず涙があふれていた。
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