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今年、睦君に会えたのは9月3日までだった。
9月4日に大きな台風が、たくさんの雨を落としていった。
それからは、水かさが減る事はなく、睦君は、外に出られなくなったようだ。
夏が終わったんだな・・ひかりは静かに夏を見送った。
ひかりは、その後も何度かこの曽木発電所遺構へ足を向けた。
もちろん、睦君には会えないが、それでも彼がここにいるのは間違いない。
水に浸かる曽木発電所遺構は幻想的で、刹那的でもあるし、そのせいか美しい。
睦君を思わせる。
早く夏が来てほしい。
暮れていく夕日に照らされながら、強く、強くそう思った。
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