23歳

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23歳

この年、ひかりは23歳になっていた。 ひかりの髪は肩まで伸び、緩いパーマが、洗練された印象を与えている。 この日の為に、美容室に行ったかいがあった。 顔だって、大人の女性らしくメイクが施されている。 帰り際、会社のトイレで化粧を直してきた。 「うん、大丈夫。」 ひかりは鏡に映る自分の顔を確認して、そそくさと会社を出た。 普段、化粧直しなどしたことはないし、美容院だってほとんど近寄らない。 そんなひかりがそわそわしているのには訳がある。 夏がやって来たからだ。 仕事帰りのひかりは、わくわくしながらこの場所へやって来た。 辺りは真っ暗で、遠くにある小さな街灯がポツポツと見えるだけだ。 月明りだけで前へ進む。 「睦君、いる?」 「やぁ、ひかりちゃん。今年もまた会えたね。」 そうだ、この声だ・・毎年、睦君の第一声を耳にするとひかりは胸がいっぱいになる。 私はこの日の為に、今日まで頑張ってきたんだと、生きる実感が湧きあがってくる。 「睦君は変わらいね。」 睦君に会えた喜びをかみしめながら、声を掛ける。 「ひかりちゃんは、会うたびに変わって行くね。」 久しぶりに会えた睦君は、どこか寂しい気な表情だ。 「そうだよ、私はどんどんおばあちゃんになっていくんだから。そうなったら、睦君に会うのが恥ずかしくなりそう。」 ひかりは、努めて明るい声で答えた。 静まりかえったしっとりとした空気が、嫌な予感を運んでくるような気がした。
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