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林道を走り続けていたひかりは、自転車を漕ぐのに飽きてきた。
あてもなく走っているのだから、当然といえば当然だけれど、いくら進んでもあまり景色が変わる事なく続いていた。
ここの辺で、少し休憩しよう。
林道から左に入って行ける細い道を見つけた。
細い脇道に入って行くと、突然、不思議な建物に出くわした。
水際ギリギリに建つこの建物は、何処かの国のお城のような、何かを守る要塞にも見える。
あまりに唐突に、それでいて場違いのように建つ建物に驚いた。
「この建物は何?」
気になって近づいた。
レンガ作りの建物は、どこか洒落ていて、森と川の間に立つ建物としては不釣り合いに感じるけれど、風格と凛とした気高さを持ち合わせ、唯一無二の存在感を放っていた。
(見れば見る程、不思議な建物だな。)
まがまがしい立ち入り禁止の看板が目に入った。
“誰も近づくな”
看板はそう言っているようだった。強いメッセージを感じた。
これ以上、近くのはやめておこう。
誰かに見られたら怒られてしまうかもしれないし。
「やぁ、君は?」
背後から声がする。ひかりは、人の声にビックっとなった。
私の他にも人がいたなんて、全然気が付かなかった。
立ち入り禁止と書かれた看板をぼんやり見ていたひかりは、怒られると思い身を固くしながら、声の方を恐る恐る見た。
半袖の開襟シャツにスリムな黒いスラックス姿の、色の白い青年が微笑んでいた。
どうやら、怒られる事はなさそう。
少し、安心した。
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