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空が鮮やかな赤紫に変わり始めていた。
川の色も、不思議な建物もその影響を受けて、赤紫に染まり始めている。
「そろそろ、帰らなくっちゃ。」
そう言うと、ひかりは立ち上がった。
少し遅れて睦君も立ち上がった。
「今日は楽しかった。ひかりちゃんの話、また聞きたいな。」
睦君から“今日は楽しかった”と言われて、純粋に嬉しかった。
私と過ごして、楽しいと言ってくれる人がいる。そう思えるだけで、心が踊った。
それに、そう言ってくれたのは、誰でもなくこの睦君だ。
私も楽しかった。また睦君に会いたい、そう思った。
「また、来るね。ここに来たら、また睦君に会える?」
ひかりは、睦君の目を真っすぐに見て言った。
「会えるよ。僕はここが好きだから。」
そう言った睦君が、優しく微笑んだ。
「近いうちに来るから。」
ひかりが睦君に手を振った。
「それじゃ、またね。」
睦君も手を振り返した。
ひかりは止めてある自転車へ向かいながら、何度も振り返り、睦君に手を振った。
睦君もその度に手を振り返してくれた。
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