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何が「青」だバカ野郎。「青」とか言っときゃ詩的だと思ってやがる。お前は低俗だ、発想が貧困だ、終わってる。
こんなくそつまんねーテーマやめだ、「茶」でいこうぜ。本当にセンスを競い合うなら「茶」だろ。「赤」や「緑」、ましてや「青」なんて使い古された壺だ。
お前にこの比喩がわかるか? 使い古された壺。これは要するに、これは要するに…説明する必要があるのか? その時点で悲しい。感じろよ、この言葉から。「青」とか言ってないで。もっと感受性を豊かにしろ。それじゃ行くぞ、テーマは「茶」。
おれはいつだって使い古された壺で茶を飲む。それは全てにムカついているからだ。道を歩けば空き缶が落ちている。「綾鷹」とか書いてある。何十人だか忘れたお茶の達人みたいな人達が急須で淹れたと勘違いしたお茶、綾鷹。その空き缶。
何十人だか忘れたお茶の達人みたいな人達が急須で淹れたと勘違いしたお茶の缶を道に捨てんじゃねーよ。腐ってやがる、世の中。
おれはたまらず使い古された壺で茶を飲む。ささやかな抵抗というものだ。飲み終わり、使い古された壺を丹念に洗い、ハイターに浸ける。毎回。毎回だ。茶渋が気になるんだ。
使い古された壺をハイターに浸けたおれは、夜の街に繰り出す。胸糞が悪い、飲みたい気分だ。ガールズバーへ。
「なんか今日機嫌悪いねー、どうしたのー?」
「どうしたもこうしたもねーよ」
「何かあったのー?」
「綾鷹ってあるだろ?」
「お茶の?」
「そう、何十人だか忘れたお茶の達人みたいな人達が急須で淹れたと勘違いしたあれだよ」
「え?」
「何十人だか忘れたお茶の達人みたいな人達が急須で淹れたと勘違いしたあれだよ」
「どうゆうこと?」
「だからー! 何十人だか忘れたお茶の達人みたいな人達が急須で淹れたと勘違いしたお茶だよ!」
「そうだっけ?」
「そうなんだよ!」
「で、それがどうしたの?」
「それの空き缶が落ちてんだよ! 道に!」
「へー。で、それがどうしたの?」
「なんかムカつくだろう!?」
「ちょっと言ってる意味がわかんない」
「わかるだろ!」
「いやごめん、わかんない」
「んじゃ『ハイターに浸かった使い古された壺』は!?」
「どゆこと?」
「だからー! 『ハイターに浸かった使い古された壺』だよ!」
「ごめん、全然わかんない」
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