野球少女

10/13
前へ
/13ページ
次へ
 夏の大会が終わった。山岡達は健闘むなしく二回戦で敗退した。引退も滞りなく済んだらしい。  そんな時に山岡が放課後、声をかけてきた。 「なあ、キャッチボールしない?」  私は久しぶりの会話よりも山岡とキャッチボールができることに舞い上がった。 「やっぱうまいな。女子じゃねえみたいだな」  距離があるため、山岡は少し大きな声だった。 「キャッチボール、めちゃ久しぶり! でもどうして?」  私はきっと声が踊っていただろう。 「おまえさ、うちの野球部の伝統覚えてる?」 「あぁ、引退の時にキャッチボールして会話するってやつ?」 「そうそう、みんなに普段言えないような恥ずかしいこと言ったりしてね」 「言葉のキャッチボールとかウケるよね。でも先輩見てて感動したし、憧れたな」 「今やってんじゃん」  やってみると案外良いものだと思ってボールを投げた。今日は学校の方針で部活動が休みだった。校庭にはあまり人がいないため、大きな声を出しても恥ずかしくはなかった。 「野球に疚しいことって前言ってたけど、そんなん俺だってそうだよ」 「え……?」  山岡はふぅと息を整えた。試合のここぞという時にする仕草だ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加