3人が本棚に入れています
本棚に追加
夏の大会が終わった。山岡達は健闘むなしく二回戦で敗退した。引退も滞りなく済んだらしい。
そんな時に山岡が放課後、声をかけてきた。
「なあ、キャッチボールしない?」
私は久しぶりの会話よりも山岡とキャッチボールができることに舞い上がった。
「やっぱうまいな。女子じゃねえみたいだな」
距離があるため、山岡は少し大きな声だった。
「キャッチボール、めちゃ久しぶり! でもどうして?」
私はきっと声が踊っていただろう。
「おまえさ、うちの野球部の伝統覚えてる?」
「あぁ、引退の時にキャッチボールして会話するってやつ?」
「そうそう、みんなに普段言えないような恥ずかしいこと言ったりしてね」
「言葉のキャッチボールとかウケるよね。でも先輩見てて感動したし、憧れたな」
「今やってんじゃん」
やってみると案外良いものだと思ってボールを投げた。今日は学校の方針で部活動が休みだった。校庭にはあまり人がいないため、大きな声を出しても恥ずかしくはなかった。
「野球に疚しいことって前言ってたけど、そんなん俺だってそうだよ」
「え……?」
山岡はふぅと息を整えた。試合のここぞという時にする仕草だ。
最初のコメントを投稿しよう!