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「なあ、なんで辞めたんだよ」
野球部の関根が言ってきた。山岡と同じクラスで仲のいい奴だった。
「うーん。一足先に受験勉強しようかなって。うちの学校、三年になったら自由じゃん? まあ、だいたい夏の大会終わってからの引退だけど」
当たり障りのない理由で免れようとしたけれど、隣りにいた山岡は私を睨んでいた。
「先生にだけ言って辞めるなんて酷くないか? 俺に相談もして欲しかった。それに、他の奴らだって寂しがってる」
体育会系のノリで言えば、辞める時に労ったりしたかったのかと思った。もしかしたら春の大会を終え、次に引退最後の夏の大会だという時に辞めた私を裏切りと捉える人もいたかもしれない。
申し訳なく思っていると関根が言った。
「お前目当てで入った一年がやる気なくした。どうすんだよ。女子がいるだけで違ったのに」
私はカチンと来て、そして絶望した。
「そんなやつ、最初っからいらないだろ」
私はそう言って二人の前から逃げた。
選手には成れなかったけれど、私なりに精一杯尽力してきたつもりだった。なのに女子というだけで悔しい思いを今でもさせられたのだ。努力なんて認めてもらえなかった。
誰もいないところで涙を拭いた。
何より山岡からも「ただの女子」扱いだったことが悔しかった。見ていてくれたと思ったのに。女子がいれば部員のモチベーションに繋がるとしか思われていなかったのか。
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