野球少女

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 夏になった。もうすぐ大会が近い。これが終わったら三年生は引退の時期だった。  山岡のことは嫌いになれなかった。変なもので、好きという気持ちは近くにいても遠くに離れても育ってしまうと知った。  たまに山岡と休み時間の廊下や登校中に鉢合わせた。その時、山岡は何か言いたそうな顔をした。私は怖くてそそくさとその場から離れた。  好きという気持ちと、傷付きたくないという気持ちが大きくなった。  純粋に野球が好きなのに、山岡を好きになってしまったばかりに、不順な動機で野球部にいると思われるのが嫌だった。  野球部を辞めてからは女子からの僻みもいじめもなくなった。私を見る目が変わったのだろう。最初は鼻で笑ってくる女子もいたけれど、気にしていなかったら相手にもされなくなった。
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