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先生が黒板にチョークを突き付けながら、みんなを注目させている。
でも、私の瞳は彼に夢中だった。
左腕でノートを押さえ、右手で熱心にノートを写している。
私の席から見える後ろ姿さえ優雅に見えた。
彼がこの学校、『国立ちくわ高校』に入学してきたのは今から3日前だ。
確かCHIKUWA高校から転校してきたらしい。
初めて彼を見た時、心拍音が大きくなっていくのが自分でも分かった。
細長く、しなやかな体に、オレンジと白の美しい色合い。
そして、てっぺんには大きな穴が開いている。
控えめに言ってちくわだ。
ゆっくりとした足取りで黒板の前に立ち、
先生に促されるまま、静かに息をつき、挨拶をしていた。
その落ち着いた、美しい声を今でも覚えている。
「僕の名前はチクワと言います。皆さん、よろしくお願いします!」
これまで私は恋愛には無関心、一切興味が湧かなかった。
しかし、彼が初めてこのクラスに足を踏み入れた時、胸の奥に熱いものを感じた。
すぐにこれが恋だとわかり、自分の隣の席に座ることを必死に願った。
だが、神様は意地悪だ。チクワ君は一番前の席に座らされた。
もちろん私の隣の席ではない。彼の隣はこのクラスで一番嫌われている毒島だ。
悔しかった。何故私ではなく彼女なのか。
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