前編 チクワ君との出会い

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チクワ君は転校一日目にしてたくさんの男女友達ができていた。 どうやら話しやすく、明るい奴だ。と人気があるらしい。 私は胸のドキドキを抑えられず、話しかけることができなかった。 その日は勇気を出せなかった自分を必死に責めた。 昨日のことだ。チクワ君が学校に転校して二日目のこと。 勇気を出し、チクワ君に話しかけてみた。 「初めまして、チクワ君」 「あぁ、斎藤さん」 名前(苗字)を呼ばれてしまった。凄すぎる。 一日でクラス全員の名前を覚えたとでもいうのか? 驚愕しながらも詳しく訊ねる。 「クラス全員の名前を覚えたの?」 「うん、記憶力には自信があるし、これから生活する仲間だろ?」 私も転校の経験はあるが、一日でクラス全員の名前を覚えようとはしたことがなかった。 「もうすぐ、授業が始まるよ。」 「あ、うん。そうだね。」 今日はこれくらいの会話しかできなかった。確かに彼はとても明るく、話しやすい。 ずっと緊張は解けないままだった。手汗が止まらない。 三日目。現在に至る。いつのまにか授業は終わってしまったらしい。 チクワ君の周りに人だかりが出来ている。 半分男子、半分女子だ。 私も女子の集団に紛れる。 「チクワってさ、好きな食べ物何?」 「うーん…枝豆かな。」 男子が次々と質問をしていた。 「お前って部活何部入ってたの?」 「サッカー部だよ。」 自己紹介で言っていたはずなのに何度も質問している。 下らないと思い、自分の席に戻ろうとした時だった。
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